孤独死を防ぐ!原因と対策を徹底解説
目次
孤独死とは、一般的に「一人暮らしで、誰にも看取られず一人きりで死亡し、後に発見される事例」を意味します。そんな孤独死は年々増加傾向にありますが、どのような原因があるのでしょうか。今回は孤独死を取り巻く実情を踏まえ、孤独死の原因・対策・予防策、さらに孤独死が起きた際の対処についても解説します。
孤独死を取り巻く実情
日本の孤独死数は年々増加しており、また若者も孤独死と無関係ではないことが現状となっています。まずはデータをもとに、孤独死を取り巻く実情を知っていきましょう。
年々増加傾向の孤独死
日本における65歳以上の高齢者の割合は、以下のグラフからも分かる通り年々増加傾向を示しており、2021年9月15日時点で過去最多となる3,640万人に達しました。これは全人口の29.1%が高齢者という実情です。(※1)
また孤独死数においても、高齢者人口に比例するように徐々に増加を示しており、2019年に国土交通省が発表した「死因別統計データ」では、東京都内における65歳以上の孤独死数が2018年に過去最多の3,867人を記録しています。
このことから孤独死と高齢化は深い関連を持ち、日本の社会問題のひとつであるということがわかります。
孤独死と高齢化には深い関連がある一方、若者も孤独死と無関係ではありません。上記のグラフを見ると、東京都内の15~64歳の孤独死数も毎年一定数を記録しています。そのため、孤独死問題と向き合うためには、若者の孤独死防止策を考えていくことも、必要不可欠であることがわかります。
また、20~30代の若者を対象にした「若者の孤独死に関する意識調査」においても、「現在の生活で孤独死の不安をとても感じる/たまに感じる」との回答が、全体の30%にのぼったという結果も出ています。
若者世代にとっても、孤独死が他人事ではない問題として捉えられてきているようです。
孤独死が起きる原因と問題点
深刻な社会問題となっている孤独死は、なぜ発生するのでしょうか。考えられる4つの原因を紹介します。
- 一人暮らし高齢者の増加
内閣府の「平成30年版高齢社会白書」を見ると、65歳以上の高齢者の単独世帯は、2015年の段階で約600万世帯、2020年は約700万世帯、2025年になると約750万世帯に達すると推計されています。1980年から65歳以上の高齢者の単独世帯の増加傾向は続いており、高齢者の孤独死リスクも増大しているといえるでしょう。 - 貧困
会社の倒産、リストラ、離婚等の影響を受け、金銭的な余裕がなくなることも、孤独死リスクを高める原因となると考えられています。具体的には、貧困により適切な病院受診ができなくなったり、高齢者住宅などの施設入居が難しくなったりした結果、孤独死につながるという恐れがあるのです。 - つながりの断絶
会社の倒産、リストラ、離婚は貧困のみならず、社会とのつながりが絶たれる原因にもなります。こうした社会との接点が減ることによる孤立が、孤独死に至るリスクを増大させることにもつながっていくのです。 - パラサイト・シングルの高齢化
パラサイト・シングルとは、成人後も親と同居し、家事全般の生活条件を依存し続ける未婚者のことを指します。そんなパラサイト・シングルが生活能力の低いまま、親の死去などに直面し、一人暮らしでかつ貧困の状況等に陥ることで、孤独死につながる恐れが懸念されています。
また孤独死が発生した際の大きな問題のひとつが、不動産価値の低下です。孤独死が発生した物件は「事故物件」扱いとなり、新たな入居者探しに苦労するほか、初期費用や賃料を下げざるを得なくなるケースもあります。そのため、賃貸経営者や不動産オーナーは、孤独死に対してできる限りの対策を考えておくことが望ましいといえるでしょう。
高齢者は住まう家を選べない?
ここでもうひとつ社会問題となっている「空き家問題」についても言及していきましょう。
総務省統計局の「平成30年住宅・土地統計調査」によれば、空き家数は増加を続けており、2018(平成30)年には全国848万戸に達しました。ここ30年を見ると、空き家数が2倍以上に増加したことがわかります。
<空き家数及び空き家率の推移-全国(昭和38年~平成30年)>
空き家の増加がもたらす問題には、老朽化による建物の崩壊や、不法侵入や放火といった犯罪リスクが上がることなどが挙げられます。しかし空き家が増えているにも関わらず、高齢者は入居を渋られるといったケースがあることも事実。
賃貸情報サイト・R65が行った「住宅難民問題」の調査では、65歳を超えて賃貸住宅の部屋探しをした経験のある人の23.6%、およそ4人に1人が賃貸契約を断られた経験を持つことがわかりました。
さらに、国土交通省の「家賃債務保証の現状」によれば、賃貸物件オーナーのおよそ6割が高齢者の入居に対して拒否感を持つとの調査結果が紹介されています。
このように、空き家問題を抱えながらも高齢者は入居を断るといったお客さんを選ぶような殿様商売は可能なのでしょうか?今後は、社会的ニーズとして高齢者が住む家を自由に選べることが、より求められるはずです。大家やオーナー側にはある程度そのニーズに応えていく必要がありますが、その際はもちろん、充分な孤独死対策が不可欠となっていくでしょう。
なお、以下では高齢者が部屋を借りる際の安心材料となる保証や、高齢者向けの賃貸住宅について紹介しておきます。
- 家賃債務保証
賃貸住宅を借りやすくするため、入居契約の際に家賃債務等を保証し、保証会社が借主の連帯保証人に近い役割を果たす制度。家賃滞納、原状回復費、訴訟費などの補償が含まれます。 - 高齢者向け優良賃貸住宅
「高齢者の居住の安定確保に関する法律」に基づいて建築された賃貸住宅で、公営住宅、UR賃貸住宅などがあります。一定以下の所得の方に対して家賃負担を軽減するなどの措置がとられています。
高齢者の孤独死を防ぐ対策・サービスには何がある?
高齢者の孤独死を防ぐ主な対策・サービスは、およそ4つに大別できます。
ここからは、これら4つの対策・サービスについて詳細を見ていきましょう。
通所・訪問サービス
通所・訪問サービスの利用は、社会との接点を増やし、孤独死を防止するための有効な対策のひとつとなっています。具体的な通所・訪問サービスには以下のようなものがあります。
- デイサービス(通所介護)
日帰りで施設に通い、入浴、食事、体操などのサービスが受けられます。要介護状態となった場合でも、利用者の能力に応じた自立した日常生活を営むことができるよう、生活上の世話や機能訓練などをサポートしてくれます。 - デイケア(通所リハビリテーション)
医師の常勤する施設でリハビリ中心のサービスが受けられます。福祉・医療関係施設に日帰りで通い、生活機能向上のための訓練のほか、食事などを支援してくれます。 - ホームヘルパー(訪問介護員)
利用者の自宅に出向いた訪問介護員による、入浴、食事、移動、排泄などの日常生活のサポートが受けられるサービス。
企業・自治体・アプリの見守りサービス
見守りサービスは自治体・行政のみならず企業からも提供されています。また近年では、孤独死の防止に役立つ見守りアプリも登場していますので、1つずつチェックしていきましょう。
企業の見守りサービス
企業から提供されている見守りサービスには、以下のようなものがあります。
- 宅配便、郵便局、新聞社による、訪問型の安否確認サービス
- 電気、水道、ガスの使用量など、ライフラインを確認することによる安否確認サービス
- ホームセキュリティ企業による見守りサービス(非常ボタンや防犯センサーの設置)
- 見守りサービスや見守り家電付きの賃貸住宅 など
自治体・行政の見守りサービス
自治体・行政の見守りサービスには、以下のようなものがあります。
- 民生委員・ボランティアの活動
地域の相談役として活躍する非常勤の地方公務員である民生委員や、ボランティアによる見守り活動は、全国の多くの自治体で実施されています。
- 企業・NPO・社会福祉法人と連携した活動
企業・NPOなどと連携し、日常の異変を察知します。例えば神奈川県では、個人宅を訪問する業務の事業者と「地域見守り活動に関する協定」を締結し、市町村や警察、消防と連携した地域見守り活動に取り組んでいます。また岩手県西和賀町では、要支援世帯に人感センサーと呼び出しボタンの機器を設置し、地域の社会福祉法人や家を離れて生活している家族などに情報を提供するサービスに取り組んでいます。
- 職員による定期的な見守り
地域包括支援センター、あるいは自治体の職員が定期的な見守りを実施しているケースもあります。例えば岐阜県関ヶ原町では、春・冬期に住民課職員によるチームを作り、75歳以上の一人暮らし世帯を訪問する見守り活動を実施しています。
見守りアプリ
スマートフォンを使っている高齢者の場合は、見守りアプリをダウンロードすることで、孤独死防止に役立てることが可能です。
見守りアプリには、ダウンロードするだけで定期的に家族や親しい人に安否報告をしてくれるものや、照度センサーや内蔵カメラによる動体感知が可能なものなど、さまざまな機能やサービスがついています。
実際にアプリを使用する高齢者や、安否連絡を受け取る家族が使いやすい簡単なツールを導入することが、継続的に利用するうえでは重要です。
またアプリには、Android未対応・iOS未対応など、ダウンロード可能な機種が限られるものもあるので、導入を検討する際には注意してください。
居住環境を変える
高齢者向けの住宅は、安否確認サービスがついているほか、職員による定期的な見守りも期待できます。以下では、民間運営の高齢者向け住宅と、地方自治体などが運営する公的な高齢者向け住宅に分けて紹介します。
【民間運営の高齢者向け住宅】
特徴 | 入居条件 | 費用 | |
---|---|---|---|
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住) | 主に自立した高齢者向けに、生活支援のついた施設 | 原則60歳以上の方 | 月額10〜30万円 ※別途、敷金などの費用あり |
有料老人ホーム(介護付) | 介護サービスや生活支援を受けられる | 原則65歳以上で、自立・要支援1~要介護5 | 月額15〜30万円 ※別途、入居一時金などの費用あり |
有料老人ホーム(住宅型) | 必要に応じて介護サービスが受けられる | 自立・要支援1~要介護5 | 月額15〜30万円 ※別途、入居一時金などの費用あり |
【公的な高齢者向け住宅】
特徴 | 入居条件 | 費用 | |
---|---|---|---|
ケアハウス(軽費老人ホーム) | 介護や生活サポートが定額で受けられる | 自立した生活が難しい60歳以上の方 | 月額数万円〜15万円前後 ※別途、初期費用あり |
シルバーハウジング | バリアフリー設計で見守り機能が付いた公的な賃貸住宅 | 60歳以上の方、もしくは夫婦の一方が60歳以上の方 | 月額1万円~10万円 |
地域コミュニティへの参加
地域コミュニティへの積極的な参加は、社会との接点が増えることで、孤独死の防止にも役立ちます。具体的な地域コミュニティの参加方法には以下のようなものもあります。
- 近所付き合いを深める
- 地域のボランティア活動に参加する
- 社会人サークルや趣味の集まりなどへ参加する など
高齢者が望む暮らしを尊重することも大切
一人暮らし高齢者には、孤独死に対する不安がつきまとうのが正直なところです。一方で、現在の生活スタイルや居住環境、コミュニティを変えたくないと考える高齢者も少なくありません。
そのため孤独死対策を考える際には、個々の高齢者自身が望む暮らし方を尊重した上で、適切なサービスの利用を検討・活用していくことが大切といえるでしょう。
【ちなみに…】若者の孤独死を防ぐ対策
若者の孤独死対策も「社会との接点を増やす」という基本においては、高齢者の孤独死対策と同じです。
具体的には、友人や両親などと定期的に連絡を取り合ったり、会ったりすることも有効な対策となります。
また定期的にSNSを更新したり、バイタル情報の記録や転倒時のアラームが可能なウェアラブルデバイスを着用したりするのも良い方法といえるでしょう。
万が一に備えて入っておくべき孤独死保険とは
孤独死を防ぐための対策を講じることも大切ですが、万が一孤独死が起きてしまったときのために備えておく孤独死保険を検討することもおすすめです。
孤独死保険とは、孤独死による家賃の損失や居室の原状回復費などを保障する保険で、家主型と入居者型の2種類が存在します。
以下、家主型と入居者型の孤独死保険の一部を紹介します。
<家主型の孤独死保険>
家主型の孤独死保険では、空室期間が発生した際の家賃、原状回復や遺品整理にかかる費用などが補償されます。
費用(保険料) | 家賃補償 | 原状回復補償の限度額 | その他 | |
---|---|---|---|---|
大家の味方
(株式会社あそしあ少額短期保険) |
年間費用=1棟の家賃合計額×1.22%+戸室数×2570円 | 最長半年 | 300万円までの実費(修理費用保険金として) | 臨時費用保険金20万円(死亡原因が犯罪被害の場合50万円) |
無縁社会のお守り(アイアル少額短期保険株式会社) | 月額費用=1戸室あたり280~390円 | 最長1年(ただし200万円が限度) | 100万円の実費(遺品整理費用含む) | 原状回復費用5万円未満の場合は、事故見舞金5万円 |
大家さんの安心ぷらす
(住まいぷらす少額短期保険株式会社) |
年額費用=1戸室あたり2,700~4,300円 | 25万円もしくは50万円(補償額はコースによって異なる。犯罪死・自殺は補償額が2倍) | 100万円まで(修理費用保険金として) | 居室外死亡、
遺品整理費用保険金額に、定額3万円 |
<入居者型の孤独死保険>
入居者型の孤独死保険では、家財や賠償責任、遺品整理などにかかる費用が補償されます。保険料は入居者の家財保険料に含まれるため、家主に負担がない点はメリットです。一方、入居者型の孤独死保険では、空室期間が発生した際の家賃補償はないため、ご注意ください。
費用(保険料) | 家賃補償 | 原状回復補償の限度額 | その他 | |
---|---|---|---|---|
ライフアシスト家財保険(A20コース)(ユーミーLA少額短期保険株式会社) | 20,000円(2年) | 500万円 | 1,000万円 | 残存物片付け、転居時引越、失火見舞にかかる費用も補償 |
住まいるパートナー(P1)(アクア少額短期保険株式会社) | 13,000円(2年) | 133.1万円 | 1,000万円 | 孤独死による損害復旧費用として上限100万円補償(実費) |
賃貸くらし安心保険プラス
(セーフティージャパン・リスクマネジメント株式会社) |
17,000円(2年) | 272万円 | 1,000万円 | 凍結、ドアロック交換費用、窓ガラスの熱割れなどの修理費用も100万円補償 |
それでも孤独死が起きてしまったら…
孤独死を防ぐためにさまざまな対策が取れることを紹介してきました。ですがそれでも孤独死をなくすことは現実的に難しいというのが正直なところです。場合によっては、自身が第一発見者となる可能性もゼロではありません。最後に、孤独死が起きてしまった際の対処法や、利用可能なサービスを紹介します。
まずは警察・役所・親族に連絡
孤独死が発生した際はまず、以下3つの手順で対処を実施します。
- 救急車もしくは警察を呼ぶ
発見された方の生死がわからない場合は、救急車を呼びます。明らかに亡くなっているようであれば、警察に通報してください。
- 保証人や親族への連絡
大家や不動産管理会社が孤独死とみられる現場を発見した場合は、救急車もしくは警察を呼んだ後で、保証人や親族へ連絡を取りましょう。
- 死亡届の提出
死体検案書、死亡診断書などを受け取った後で、死亡届を死後7日以内に役所へ提出します。
死亡届の提出は親族が行うか、親族と連絡がつかない場合は、大家や不動産管理会社側が届出義務者となります。ただし近年では、死亡届の手続きを葬儀社が代行するケースも増えています。
遺品整理・特殊清掃業者・葬儀会社へ依頼
警察・役所・親族などへの連絡後は、以下のように必要な業者へ依頼します。
- 葬儀社への依頼
葬儀社に連絡し、葬儀の手配をします。遺族と連絡が取れれば葬儀内容などを相談しても良いでしょう。遺族がご遺体の帰郷を希望されるケースもあるかもしれませんが、費用面・衛生面などから、現地で火葬し、お骨となってから帰郷するケースが一般的です。
- 孤独死現場の掃除・遺品整理の依頼
最後に孤独死現場の掃除や遺品整理を実施します。具体的には特殊清掃業者などを手配し、清掃後に遺品を整理します。
遺族が遺品の仕分けや形見分けを希望する場合は、遺品の衛生状態に充分注意してください。遺品の状態については自己判断せず、遺品整理業者に判断してもらったほうが安心です。
なお、葬儀の手配、孤独死現場の掃除・遺品整理などに際して、地方公共団体などの補助やサポートを受けられるケースがありますので以下にご紹介します。
- 入居者などが地方公共団体の補助制度に申し込んでいた場合
サービス内容は地方公共団体ごとに異なりますが、残置物撤去の支援や、葬儀、原状回復等に係る費用の補助を受けられる可能性があります。
- 入居者が居住支援協議会・居住支援法人・社会福祉協議会等に申し込んでいた場合
葬儀の実施、残った家財の処分、各種行政届の手続きなどのサポートが受けられます。
まとめ
孤独死は高齢化と比例するように増加傾向を見せています。また、孤独死の一定の割合を若者が占めており、現役世代の孤独死についても気をつけなければならないのが現状といえるでしょう。孤独死に対しては、それを防ぐためのさまざまな対策・サービスを活用しつつ、万が一に備えて、きちんと保険に加入しておくことも重要です。
大島てるさん監修