法的瑕疵ってなに?
気をつけるべき3つの法律。事例とともに解説
目次
瑕疵(かし)物件と聞くと、自殺や事件があった事故物件(訳あり物件)を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
瑕疵物件とは“何かしらの欠陥がある物件”のことで、欠陥の原因によって心理的瑕疵、物理的瑕疵、環境的瑕疵、法的瑕疵の4つに分類されます。
今回は法的瑕疵について、関係する3種類の法律を実際にあった事例とともに解説していきます。
法的瑕疵とは
法的瑕疵物件とは、建築に関する法律(消防法、建築基準法、都市計画法)に反していたり、法律によって利用が制限されている物件のことです。物理的瑕疵などのように、日常生活において不具合や欠陥があるものとは異なり、違法建築となってしまうため売買の際は取り扱いが非常に困難となります。
法的瑕疵をめぐる問題では、新築から年数がかなり経っていたり相続などにより所有者が変わっていたりして、法令に違反している物件だと気づかずに売ってしまうケースがあります。法的瑕疵物件だと分かった上で売却する場合は、買主の住宅ローンが通りにくいなどのデメリットも発生します。
法的瑕疵に関わってくる法律は主に建築基準法、消防法、都市計画法の3つです。
それぞれどのような場合に法的瑕疵となるのかを見てみましょう。
建築基準法
建築基準法は、建物の安全を確保するために建築物の敷地や構造、設備、用途について基準を定めている法律です。建築基準法により法的瑕疵となるケースとして、以下の3パターンが多く見られます。
- 建ぺい率・容積率がオーバーしている
- 構造上の安全基準が満たされていない
- 接道義務を満たしていない(再建築不可)
消防法
消防法は火災の予防や、発生時の被害を抑制するために定められている法律です。この法律によって、火災報知器や排煙設備、ガス漏れ警報器、集合住宅であれば避難はしごや誘導灯などの設置が義務付けられています。これらの設備が設置されていない、老朽化して機能性を失っているなどの場合は法的瑕疵となりえます。
都市計画法
都市計画法は“機能的なまちづくり”を行うために定められている法律です。この法律によって、都市計画地域や市街化区域といったように、地域ごとに土地の利用が制限されています。
都市計画法により制限されている地域にある建築物は、法的瑕疵物件となってしまいます。
法的瑕疵を告知しないと契約不適合責任が問われる
法的瑕疵がある物件を賃貸・売買する際には、取引相手に告知する義務があります。この告知義務を守らず取引後に瑕疵が発覚すると、契約不適合責任を問われる可能性が高いです。このような事態を避けるためにも、不動産取引では事前の瑕疵調査が極めて重要です。
告知義務の遵守は、契約者に対して透明な情報を提供し、信頼される取引を行う基盤となります。法的トラブルを未然に防ぎ、双方が納得のいく安全な不動産取引を進めるためにも、瑕疵の把握や情報開示を最優先しましょう。
実際にあった法的瑕疵事例とは?
法的瑕疵があることを事前に伝えていれば、売却が難しいだけで済みます。しかし売却後に瑕疵が見つかった場合、売主は責任を問われ損害賠償を支払うことになってしまうかもしれません。
このように法的瑕疵物件を扱うにはリスクがあるため、どのような事例があったのかをしっかりと確認しておきしょう。
建築基準法に違反する事実の有無の説明義務違反
不動産を購入した買主(以下、A)が、売買の媒介をした業者(以下、B)に対し、建物に建築基準法違反があることの説明を怠ったとして、損害賠償を請求した事例です(東京地裁 平成30年9月21日判決)。
売買に際してBが作成した重要事項説明書には、「建物が建ぺい率に違反し建築確認を受けていないものであること」「同違反によって買主に生じ得る不利益の有無」についての記載・説明がありませんでした。
売買から約20年後、Aが不動産を売却する際に上記の瑕疵が発覚。Aは想定していた利益が得られなかったとして、Bに対し損害賠償を請求しました。
売買収益の損害に対し裁判所は、築年数が経っていたこと、Aの営業・広告活動などによって左右されることなどから、訴えを却下しています。ただし購入時のBによる説明義務違反は認められる結果となりました。
トラブルを避けるためにも、建築基準法違反が判明した際は、その内容だけでなく予測されるリスクついても記載・説明することが必要でしょう。
消防法違反に関して売主に瑕疵担保責任が認められた事例
購入した建物に消防法違反があったため、補修工事を余儀なくされた買主が、売主および仲介業者に工事費用相当額の損害賠償請求をした事例です。
売主は消防署から消火設備の不備を指摘されていたものの、その事実を買主や仲介業者に伝えていませんでした。そのことから、このケースでは損害賠償が認められています。
まとめ
法的瑕疵物件とは、法律に違反している物件や、法律により建築制限がかかっている物件をいいます。建築当時は問題ない物件でも、法改正により後から問題が出てきてしまうケースもあるため注意が必要です。
問題を認識していながら隠して売却や賃貸契約を行ってしまうと、高確率でトラブルに発展してしまいます。そのため、売買の際には所有している物件について確認する必要があります。
しかし、一般の人が瑕疵であるかどうかを判断するのは難しいでしょう。そんなときは専門家に相談することもトラブルを避けるひとつの手です。
カンクリ不動産は瑕疵物件を中心に扱う業者です。お困りの際はぜひご相談ください。