特集コラム Column

隣人による騒音は環境的瑕疵になる?

不動産トラブルを防ぐための事例を紹介

瑕疵とは、物件や土地などに何らかの欠陥や不具合があることを意味する用語です。欠陥の原因によって「物理的瑕疵」「法的瑕疵」「心理的瑕疵」「環境的瑕疵」の4種類に分類されます。

 

瑕疵のある物件を売買・賃貸する場合、告知義務を徹底しなければ法的なトラブルに発展してしまいます。しかし新築時には問題がなくとも、のちのち瑕疵物件となってしまうケースも。

 

今回は、瑕疵のひとつである環境的瑕疵について、事例とともに詳しく解説していきます。

環境的瑕疵ってなに?

環境的瑕疵とは、不動産そのものには問題がないものの、周辺の環境が原因で問題が起こる物件です。

環境的瑕疵の具体例

  • 踏切や高速道路、工場などがあり、騒音や振動がある
  • 下水処理施設やゴミ処理施設などがあり、異臭がする
  • 風俗店や遊戯施設、暴力団事務所があり、治安が悪い
  • ビルや大きな建物があり、眺望・日当たりが悪い

 

このように、環境的瑕疵には通常の生活を送るうえで不快感や嫌悪感を及ぼす状況があります。

環境的瑕疵の告知義務

瑕疵がある物件は、賃貸や売買契約の取引相手にその事実を告げなければなりません。これを告知義務といいます。

 

環境的瑕疵の告知義務で難しい点は、人によって受け取り方が違うところです。たとえば歓楽街の中にある物件だとしても、利便性が良ければ騒音や雰囲気が気にならないという方もいます。

 

瑕疵となるかの判断や、法的トラブルに発展する可能性については、宅地建物取引業法の第47条が参考になるでしょう。

(業務に関する禁止事項)

第四十七条 宅地建物取引業者は、その業務に関して、宅地建物取引業者の相手方等に対し、次に掲げる行為をしてはならない。

 宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の契約の締結について勧誘をするに際し、(中略)次のいずれかに該当する事項について、故意に事実を告げず、又は不実のことを告げる行為

(中略)

 イからハまでに掲げるもののほか、宅地若しくは建物の所在、規模、形質、現在若しくは将来の利用の制限、環境、交通等の利便、代金、借賃等の対価の額若しくは支払方法その他の取引条件又は当該宅地建物取引業者若しくは取引の関係者の資力若しくは信用に関する事項であつて、宅地建物取引業者の相手方等の判断に重要な影響を及ぼすこととなるもの

(略)

引用:e-GOV

47条では、宅地取引の相手方に対し、重要事項について「故意に事実を告げず、又は不実のことを告げる行為」を禁止しています。ここでいう重要事項とは、「宅地若しくは建物の所在、規模、形質、現在若しくは将来の利用の制限、環境、交通等の利便などの相手方の判断に重要な影響を及ぼすこととなるもの」などです。

 

つまり、“相手方が物件に対してどういったことを望んでいるか”が重要となるでしょう。それゆえ、契約時に近隣の施設について説明していなければ、法的責任を問われることもあります。

隣人トラブルは環境的瑕疵になる?告知義務の有無は?

隣人によるトラブルは環境的瑕疵と見なされることがありますが、その告知義務の有無は事例によって異なります。ここでは、告知義務が必要な事例と不要な事例を詳しく見ていきます。

告知義務が必要な事例

  • 境界線トラブル

隣人と隣地境界線(※敷地と敷地の境界を明確にする線)で揉めている戸建て物件を売買・賃貸する際には、明確な告知が必要です。隣地との境界線を巡る争いは、将来的な訴訟リスクにもつながりやすいため注意しましょう。

 

  • 隣人が集合住宅の規約違反をしている場合

集合住宅におけるルール違反は迷惑行為に該当します。たとえば、ペット不可のマンションで犬を飼っているなど、規約違反をしている人物が隣に入居している場合は、事前の告知が必要です。

 

  • 隣人がゴミ屋敷

隣人の部屋が極端に不衛生な状態にある場合、衛生問題や害虫の発生源になるため、告知する必要があります

告知義務が不要な事例

一方で、騒音トラブルについては状況によって告知義務の判断が異なります。どれだけうるさいと感じても、「一般的な生活音」は瑕疵とは言いにくく、通常は告知義務はありません

 

では、一般的な生活音とはどの程度を差すのでしょうか。

 

環境省が発表している「騒音に係る環境基準について」によれば、住宅地の騒音基準は、昼間なら55デシベル、夜間なら45デシベルです。

※55デシベルは、静かなオフィスの雑音・家庭での会話の音・大きめのエアコンの稼働音に相当。45デシベルは、静かな部屋でのささやき声・静かな住宅地や公園での自然の音に相当。

ただし「騒音」は人によって感じ方が違います。騒音が原因で隣人と激しいトラブルに発展している場合や、それが明確な不快感や生活の質の低下を引き起こしていると判断される場合は、環境的瑕疵として扱われることもあります。懸念のある物件では、告知しておくほうが適切かもしれません。

 

このように、隣人トラブルが環境的瑕疵に該当するかどうかは、具体的な事例によって判断が分かれます。不動産の売買や賃貸契約を進める際には、専門家の意見を参考にしながら、適切な対応を検討することが重要です。

実際にあった環境的瑕疵事例とは?

購入・契約後に瑕疵が見つかって裁判となった場合、売主が契約不適合責任を果たしていないとして、損害賠償請求が行われることがあります。

 

ここからは、実際に起きた過去の判例を参照しながら解説していきます。どのような場合に瑕疵と判断されるのか、実例を確認しておきましょう。

日照に関する事例

分譲マンションを購入した買主が、日照の阻害を理由に契約解除を訴えた事例です(大阪地方裁判所 昭和61年12月12日)。

 

買主は居住用マンションの専用庭でガーデニングをしたいと考え、当該物件を購入。しかし入居後、マンション南側の隣接地に予想外の高層建物が建築されてしまいました。園芸活動に必要な日照が阻害されたとして、買主は契約解除を訴え出ました。

 

裁判において、買主の契約解除の訴えは否定されています。買主が園芸のためだけでなく、居住用としてもマンションを使用していたからです。ただし、売主が契約時に「マンションの南側隣接地には木造2階建ての建物しか建たない」と説明していたため、400万円の損害賠償が認められました。

 

契約時点では、将来的な日照阻害の可能性が100%ないと言い切れない状況でした。にもかかわらず断定的な説明をして売買したことが、売主に賠償責任が発生する原因となっています。

 

このように、契約時には問題がなくとものちに問題が顕在化すると、「隠れた瑕疵(隠れたる瑕疵)」と見なされる場合があります。

近隣に暴力団事務所があった事例

近隣に暴力団事務所があることを知らず、マンション建設用の土地を購入した買主。事実を知り、契約解除による代金返還もしくは損害賠償を求めた事例です(東京地判平成7年8月29日)。

 

この事例の争点は、「近隣に暴力団事務所があると分からなかったのか」という点です。当該の暴力団事務所には、それと分かるような代紋の掲示などがなく、一般的な建物と見分けがつかない外観でした。それゆえ売主側に説明責任があったとして、売買代金の2割に相当する金額の賠償命令が下されています。

 

日照に関する事例と同じく、「事前説明がなされているか」「事前に瑕疵となりうる事柄を買主側が理解しているか」の二点が不十分だったため、売主側に責任が生じているケースです。

まとめ

環境的瑕疵は定義があいまいで、買主側の価値観などによっても瑕疵となるか否かが変わります。環境的瑕疵物件の売買で起こるトラブルの多くが、売主の告知義務が十分に果たされていないことが原因です。

 

しかし、売り手にとってはどこまで説明すればいいのか、懸念材料はすべて説明しなければならないのかと悩む点でもあります。

 

もし所有する不動産について不安があるなら、専門家への相談をおすすめします。

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カンクリ不動産では、事故物件・訳あり物件の買取を専門に行っています。

専門的な知識を持つ当社が環境的瑕疵がある物件を売主様から直接お買取するため、安心して物件を売却していただけます。売主様へ契約不適合責任を問うことはありません。

 

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